派遣社員で、誰にも相手にされなかったことが関連するらしい
いわゆるアキバ事件の実行犯は結婚できないからあんな事をした?
2008年6月、派遣社員として働く25歳の若者が、歩行者天国でにぎわう東京・秋葉原にトラックで突っ込み、通行人にナイフで襲いかかって、17人を殺傷するという事件が起きた。いわゆる「アキバ事件」である。当時アメリカにいた私は妻からのメールでこの事件を知り、早速インターネットで事件報道をチェックした。アキバ事件の容疑者加藤智大(以下「K」と略す)が、ちょうど就職氷河期世代、いわゆるロストジェネレーションであったこともあり、マスコミは、派遣社員という不安定な立場がこうした事件の背景にあると騒ぎ立てていた。
私の最初の印象も、また未婚の派遣社員の男性が事件を起こしたかというものだった。5月には江東区のマンションで派遣社員の男性・星島貴徳が2室隣の女性を強姦しようとして殺害し、トイレに流すという恐ろしい事件が起きていたからである。だが疑問も残った。たしかに、派遣社員は正社員よりも年収が少ない。30歳を過ぎると年収の伸びもあまり期待できず、将来に展望を持ちにくい雇用形態である。
しかし、だからといって、派遣社員であることが犯罪の理由だと簡単に決めつけてしまっていいのか?少年時代にかわいがっていた犬を保健所に処分されたことを理由に厚生労働省の元事務次官を殺害するという、到底信じられない事件が起こる時代なのだから、それと比べれば、派遣社員が社会を恨んで犯罪を起こすことにははるかに必然性がある。が、それでもなお、それだけのことを理由にこの事件を説明していいのかと私は疑問に思ったのだ。また、私はもうひとつのことに注目した。アキバ事件のKも江東区の星島被告も、ともに「女にモテない」ことにコンプレックスを持っていたという点である。
つまり、Kのいう「顔」は「時代」「社会」「親」に置き換えられるのではないか、と重松は言う。たしかに重松の読みは間違ってはいない。しかし私はそれでも少し疑問なのだ。
重松の言うように、Kにとって顔は時代や社会の隠喩なのか?時代や社会が置き換え不可能な運命だから、顔もまた運命として意識されたのか?いや、違う。顔が置き換え不可能な運命だから、時代や社会もまた運命に感じられるのではないか?だから私はあえて言おう。KにとってKの顔は十分に悪いのだ。今という時代の中で悪いのだ。彼の世代の中でも悪いのだ。そう感じさせるほど現在の日本社会は、「モテ」や「容姿」を重視する社会なのだ。そして、容姿の悪さをその他の何かで埋め合わせることができないと感じさせる社会なのだ。
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